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脳科学・神経科学を網羅的に学ぶ必読書
カンデル神経科学は、脳科学・神経科学分野のバイブル的存在。2014年4月に日本語版が出版され、英語や医学用語が得意でない方にも大変読みやすくなりました。脳科学、神経科学について学ぶなら絶対に持っておきたいおすすめの一冊。
カンデル神経科学は、脳科学・神経科学分野のバイブル的存在。2014年4月に日本語版が出版され、英語や医学用語が得意でない方にも大変読みやすくなりました。脳科学、神経科学について学ぶなら絶対に持っておきたいおすすめの一冊。
私たちヒトが生きていくために欠かすことのできない器官、それが脳です。ヒトは脳にダメージを受けると、様々な機能障害がでてくるわけですが、脳がほとんどなくても正常に日常生活をおくっている人がフランスにいると報告されています。
ある日、マルセーユのティモン病院に「左足に軽い麻痺が起きたので、どこか悪くないか調べてほしい」と44歳の男性患者がやってきた。担当医は、同病院のライオネル・フイエというドクター。
フイエ医師は、まず脳梗塞などの脳疾患を疑い、男性患者をCTとMRIによる画像診断を行うことに。
撮影されたCTとMRIの写真をチェックすると、それは驚くべきものだった。男性患者の頭の中には脳組織がほとんど存在していないことがわかったのである。
正常な人でも脳の中には、脳室と呼ばれる空洞が存在する。この男性患者の場合は、脳室が常識では考えられないほど拡大していて、脳組織が左右の頭蓋骨付近にしか残っていなかった。
その男性のMRIを撮った写真がこちら。左側がその男性の脳です。
みて分かる通り、頭蓋の中心部から空洞が拡がっており、頭蓋骨内のほとんどの部分が空洞になっています。脳組織は頭蓋骨近くに張り付くように存在するのみ。
フイエ医師はこの男性患者の症例を論文にまとめ上げ、イギリスの医学ジャーナル誌Lancetに掲載された。
なんでも評点:頭の中がほとんど空洞化、脳がわずかしか存在しないのに44歳まで普通に暮らしてきた男性の記事によると、脳のホログラフィー理論も関連しているのではないかとのことですが、私が特に興味深いのは下記の点です。
この男性の既往歴を調べると、生後6ヶ月のときに水頭症(脳水腫)を患い、脳圧が危険なレベルまで亢進したため、中の脳髄液を抜く手術を受けていたことが判明した。
脳がまだ未分化の状態である生後6ヶ月というのが一つのポイントなのではないかと思います。この時期ではヒトをヒトたらしめる大脳新皮質も形成されていないはずで、その後の成長により機能獲得をしていたとしても不思議ではない。
もし、このアクシデントが、成人時に起こっていたら、このような状態にはならなかったのではないかと。成長過程であったというのが大きなポイントだと思います。
また、頭蓋骨に形成されている脳器官が実際にどのようなものなのかが気になるところです。この男性患者は44歳まで問題なく社会生活をおくっていたとのことですから、脳幹など人体の生命維持に必要不可欠な器官も持っているのでしょう。