最新情報を購読する
脳科学・神経科学を網羅的に学ぶ必読書
カンデル神経科学は、脳科学・神経科学分野のバイブル的存在。2014年4月に日本語版が出版され、英語や医学用語が得意でない方にも大変読みやすくなりました。脳科学、神経科学について学ぶなら絶対に持っておきたいおすすめの一冊。
カンデル神経科学は、脳科学・神経科学分野のバイブル的存在。2014年4月に日本語版が出版され、英語や医学用語が得意でない方にも大変読みやすくなりました。脳科学、神経科学について学ぶなら絶対に持っておきたいおすすめの一冊。
エリシア・クロロティカ(Elysia Chlorotica)は、光合成ができるウミウシ。動物なのに光合成ができるのが最大の特徴。アメリカ東海岸の浅い海に広く分布するウミウシの一種。全長2cmから最大で6cm程度、緑色の体色と葉っぱのような薄く平べったい外見を持つ。
光合成をするには葉緑体が必要不可欠だが、エリシア・クロロティカは生まれつき葉緑体を持っているわけではない。成長の過程で、ヴァウチェリア・リトレア(Vaucheria litorea)という名前の藻を食べることにより光合成の「技能」を獲得する。
幼生のエリシア・クロロティカはヴァウチェリア・リトレアを探す。そして、発見するとこの藻に吸い付き、細胞の中身を吸い出してしまう。このとき、葉緑体だけは消化せずに消化管の中に保持し、これを使って残りの一生、光合成を行い続けて生きていく。
観測された中では、9ヶ月から10ヶ月にも渡って光合成で作られた糖のみを養分として生き続けている。
メイン大学のメアリー・ランポ氏が、エリシア・クロロティカ研究の第一人者。この研究が、これらの事実を明らかにした。
最大の謎は、『なぜ動物の体内で葉緑体がずっと働き続けられるのか?』ということ。葉緑体は独自の遺伝子を持っており、その遺伝子によって作られるのは葉緑体の活動を維持するのに必要なタンパク質の10%に過ぎない。他の90%は藻の細胞核で作られるタンパク質によって賄われていました。いったいどのようにしてエリシア・クロロティカの中で葉緑体は一生の間、働き続けられるのでしょうか?
最新の実験では、ランポ氏のチームはエリシア・クロロティカの餌となるヴァウチェリア・リトレアの遺伝子配列を調査。調査によると、やはり藻の細胞抜きに葉緑体単体では活動を続けられないことを確認された。
エリシア・クロロティカの遺伝子を調べたところ、その中から極めて重要なヴァウチェリア・リトレアの遺伝子が発見された。その遺伝子配列は藻の配列と完全に一致していた。ランポ氏は、どうやったのか分からないから仮説ですが…としつつ、「このウミウシは食べ物の遺伝子を盗んで自分のものにしてしまった」のではないかと考えられる。
一つの可能性としては、食べられた藻の遺伝子が消化管の中で葉緑体と共に吸収され、エリシア・クロロティカ自身の遺伝子に組み込まれ、それによって必要なタンパク質が葉緑体に供給されるようになったのではないかと考えられます。別の仮説としては、エリシア・クロロティカの体内から発見されたウィルスが遺伝子を藻の細胞からエリシア・クロロティカの細胞に運ぶのではないかとのこと。
この藻の遺伝子はエリシア・クロロティカの生殖細胞からも発見された。つまり、「体内で葉緑体の活動を維持させる能力を次世代にも伝えていける」ということ。
このウミウシが光合成をして生きているのは事実。動物が光合成を行うためには、
の2つの条件が必要となる。