脳の神経回路はニューロン同士が繋がることで形成(神経回路形成と呼ばれるメカニズム)されているが、ニューロンが繋がろうとするとき、それぞれのニューロンはどうやって繋がる相手のニューロンを選んでいるのだろうか?
NMDA型グルタミン酸受容体といいますが、神経細胞軸索の末端から放出されるグルタミン酸という神経伝達物質(neurotransmitter)を受け取る受容体の1つで、樹状突起上にあります。神経回路の成熟、学習・記憶など脳の高次機能に深く関わることが知られ、そのはたらきを抑えると、正しい神経回路をつくることができなくなります。
今回の実験では、正常に回路が作られる場合とそうでない場合の様子を比べることができました。どちらの場合も神経回路の形成過程では、樹状突起は伸び縮みをしていました。伸び縮みをすることで、正しいシナプスをつくる相手を探しているのでしょう。NMDA受容体のはたらきを抑えると、さらに伸び縮みがはげしくなりましたから、NMDA受容体は、樹状突起に正しい相手を選ぶための情報を与えているのでしょうね。それとともに、軸索(axon)とシナプスをつくった樹状突起を安定させて、正しい方向に伸びるよう導くことで、正常な神経回路の形成を行っていると考えられます。