特徴選択的反応性

大脳皮質視覚野の神経細胞は、目から入る外界の視覚刺激の中のある特徴(例えば、一定角度に傾いた輪郭、あるいは特定の方向に動く物体など)にのみ、良く反応します。こうした特定の刺激に選択的に反応する性質は「特徴選択的反応性」と呼ばれ、1981年にノーベル生理学・医学賞を受賞したヒューベルとウィーゼルが、最初に発見しました。

その後、この反応性は、脳の他の領野の神経細胞にも存在することが判明し、脳における情報処理原理の1つとされています。また、彼らは一定の方位(傾き)選択性を持つ興奮性神経細胞(興奮性細胞)が、大脳皮質視覚野内に縦に集まる、方位円柱状構造を持つことも見いだしました。その後の研究では、特徴選択的反応性の形成には、抑制性神経細胞(抑制性細胞)の働きが重要であることが示唆されました。抑制性細胞は、抑制性伝達物質のGABAを放出し、興奮性細胞の活動を抑制することで神経回路の動作を制御しているとされています。ただ、ヒトで約160億、マウスでも約1,400万と極めて多数の神経細胞で構成される大脳皮質において、その約2割を占める抑制性細胞(ヒトで約32億、マウスでも約280万)が、どのように分布し、どのように興奮性細胞を抑制しているのかは不明でした。

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